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WBCを終えて

第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は18日、準決勝1試合を行い、侍ジャパンはプエルトリコに1−3で敗れ3連覇を逃した。8回に1点を返し、なおも1死一、二塁の好機で、一塁走者の内川が盗塁死。その瞬間に三塁側の日本ベンチはもちろん、スタンドも、日本の応援団も一瞬声を失ったような沈黙が流れた。

終盤の勝負どころで痛恨の走塁ミスを犯し、3大会目で初めて対戦した中米の強豪に屈した。準決勝の土壇場に起こった痛恨のミス。このプレーはある意味、今回の日本代表の強さと脆さを象徴するようなものであったように思う。

苦戦した1次ラウンドのブラジル戦、2次ラウンドの台湾戦と、この8回から試合が動いて、日本に逆転への道は広がっていた。もう一度、問題の場面を整理してみよう。3点を追う8回。当然、ファンだけではなく日本ベンチも再びの逆転劇を意識してこの回を迎えたはずだった。そして1死から鳥谷が右中間に三塁打を放って、続く2次ラウンドMVPの井端がタイムリー、更に内川の右前安打と続いていやが上にも逆転ムードは高まった。

そんな場面で起こったのが、あの走塁ミスだったわけだ。山本監督、緒方一塁コーチャーは何のサインを出していたのか?打席の4番阿部への2球目。二塁走者の井端が一瞬、スタートを切りかけたが、すぐに走るのを止めた。しかし、一塁走者の内川は猛然と二塁を目がけて突進し、二塁ベース手前で気づいたときには、2人の走者が塁上で鉢合わせしそうな状況になっていた。

捕手のモリーナが内川を二塁に追い込んでタッチ。膨らみかけた逆転への期待は、これで一気に萎んでしまった。「重盗にいってもいいというサインがあって、少し井端のスタートが遅れた」こう振り返ったのは山本浩二監督だった。

果たしてここで何が起こったのか?首脳陣と選手の証言を改めて整理してみると、こんな“事実”が浮かび上がってくる。「グリーンライト(盗塁をしても良い許可)ではなく盗塁(必ずしろ)のサインでした」こう話すのは一塁コーチャーの緒方耕一外野守備走塁コーチ。

このサインを井端はこう説明する。「この球、じゃなくて行けたら行け、だった」

「盗塁をしてもいい」と「次の1球で走れ」の違い。要は、「盗塁できるチャンスがあったらしてもいい(無ければしなくていい)」というグリーンライトではなく、「必ず盗塁(重盗)をしろ(しかしタイミングは任せる)」というサインが出ていた。

ただ、「次の1球で走れ」という“ジス・ボール”の盗塁ではなかったということである。走ることは命じた。ただ、「次の1球で走れないなら、その次のボールと間合いを計って行けるタイミングで必ず行け」という具合に、スタートをどこで切るかは走者に委ねられたわけである

もちろん打席に阿部がいるので、カウントが不利になる前のできるだけ早いタイミングで走るに越したことはない。だから井端も初球からいくつもりでタイミングを計って、初球ファウルの2球目。ここで走ろうとしたが、スタートが悪かったために断念した。

だが、そこで内川が前の走者を見ずに走ってしまったわけである。「すべて僕の責任です。僕のワンプレーで全てを終わらせてしまった。飛び出した自分が悪い。すべて僕の責任です」試合後に涙ながらにこう語った内川ばかりを責めるのは酷であるが、いずれにしてもこのミスで、日本の逆転の芽は完全に潰えたのは間違いなかった。

さて、このプレーについては様々な意見、指摘があると思う。一つはまずあの場面で、そもそも重盗は正解だったのか、ということだ。

捕手はメジャーでも強肩を誇るモリーナで、打席には4番の阿部。しかも阿部が左打者のために、三盗の際にはモリーナは打者を避ける必要もなく送球できる。ただ、その一方でマウンドのJ.C.ロメロはクイックが下手なために、いくら肩の強い捕手でもうまくスタートさえ切れれば成功のチャンスはあるという判断だった。

4番のバットに賭けるのか。それともワンヒットでも同点という二、三塁のシチュエーションを作った上で、阿部の安打を待つのか。作戦としてはどちらも選択肢としてあるが、この場合、盗塁するなら100%成功する確信がなければ走れない場面であることだけは間違いない。

だから盗塁といっても、次の1球で走れという「ジス・ボール」ではなく、「いけるタイミングを計って行け」と選手の判断に委ねざるを得ない。走者が成功の確信を持てるタイミングで走らなければならないからである。

この場面はそれぐらいに成功確率が高くなければ、ギャンブルは許されないわけだ。そう考えると、それを選手の判断に委ねなければならない重盗そのものが、逆に作戦としては中途半端だという考えも当然、出てくることになるわけである。

そして最後の一つは、なぜ内川は井端が止まった時点で自分も走るのを止められなかったのかということだ。重盗の時の一塁走者の不利とモリーナの強肩を意識していた内川。本人も認めているように、このプレーで明らかなミスはこの内川の走塁である。

重盗を含めて、すべての走塁は前の走者の動きに合わせて後ろの走者も走らなければならないのが鉄則だ。この場合も内川は井端がスタートを切った瞬間に、合わせてスタートを切らなければならないし、井端が盗塁を止めたら自分も止まらなければならない。

ただ、内川の心理的な重圧は十二分に分かる場面でもあるのだ。前述したように一、二塁で重盗をする場合には、一塁走者は二塁走者のスタートを見てから自分もスタートを切る。そのため最初の一歩の踏み出しが一瞬だけ遅くなってしまう。その分、捕手が二塁に送球したときには、アウトになる確率も高くなるわけだ。さらにモリーナの強肩も頭にある。

だから「スタートだ」と思った瞬間に、内川は顔を下げて必死に二塁に向かって走ってしまった。やはり100%成功しなければならないというプレッシャーが、内川にそんな初歩的なミスを犯させてしまったわけである。

「一つ先の塁に行かせる姿勢だった。失敗したが、悔いはない」試合後の会見。山本監督はこの場面をこう振り返っている。山本監督はギャンブルと言われようと“足”に賭けた。打線は水ものであり、いい投手にぶつかったらそうそう点は取れない。そんなことは分かっていたことなのだ

その中でどうやって点を取るのか。それがバントと盗塁などの足をからませた攻撃がいかに出来るか、だったはずである。今回の日本代表の戦いぶりでは、思ったよりもバントは少なかった。ただ、指揮官が語ったように一つ先の塁を目指す積極的な走塁は随所にみられ、それがピンチを救ってきたのも事実である

だから最後もギャンブルと言われようとも、足に賭けた。そうして次の塁を奪うことで、大黒柱の阿部のバットをより効果的に活用しようとしたものだったのである。日本はこうやって勝ち上がり、そこでミスが出たときに敗れ去った。

3連覇の夢は絶たれ第3回WBCの侍ジャパンの戦いが終わったわけだが、改めて野球の持つ恐さと面白さが表れた大会であったといえるであろう。
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